教育責任者より

なぜリハビリテーション医学か

リハビリテーションに興味を持つきっかけは人それぞれだと思いますが、私がリハビリテーション科を考え始めたのは学部5年生の頃でした。当時、ボランティアとして障害を持った方のお宅を訪ねていましたが、ある40代の方が重度障害者に対する就学免除制度により中学教育を全く受けていませんでした。中学くらいは出たいと夜間中学に通いながら中卒検定試験の準備をしておられ、私はそのお手伝いをしていました。その中で「障害を持った方の役に立ちたい」と漠然と思うようになりました。 実習で各科を廻ると、小児科、整形外科、神経内科、循環器、呼吸器等、どの科も面白く思え、一つに絞れなくなりました。そこで既存の科に入るのではなく、「やりたいことが自由にできそうな科」に入ろうと考えました。元々体を動かすことが好きで「運動の科学」に興味がありましたが、スムーズに動くためには、環境を認
知して司令を出す脳、司令を伝える神経系、実際の動きを起こす筋、筋の収縮を外界に伝える骨関節系、エネルギーを供給する呼吸循環系など、体の多くのシステムが協調して働く必要があります。このシステムのどこかに問題が生じると「動きにくい」「動けない」状態になりますが、既存科の枠組みではシステム全体を総合的に診ることは難しいと感じていました。 卒業した1979年当時、リハビリテーション医学は一般社会はもとより、医学・医療界においてもほとんど認知されていない時代でした。講座がある大学は限られ(慶應はなし)、非常に心許ない状況でしたが、横断的診療、全人的医療、チーム医療等の考え方に従来の医療にない新しい息吹を感じ、何よりも多くの挑戦の余地が残されている未開拓の分野であることに惹かれました。

優れたデザイナーになろう

大学での2年間の研修後、20年間は複数の地域の病院でリハビリテーション科を新たに立ち上げるという苦労も多かったですが、やり甲斐のある時を過ごしていました。2002年から大学に籍を置き、診療に加え、医学生、研修医、院生等の教育やリハビリテーション医学をさらに深化・進化させるための研究に携わっています。 これまでの経験を踏まえ、今はリハビリテーション医学を「変化への適応をデザインする医学」と捉えて
います。リハビリテーション医学は、疾病、外傷、加齢、環境等の要因により、心身機能に「変化」が生じ、日常生活や社会生活に支障を来している方を対象にします。この「変化」を的確に診断・評価し、様々な治療手段を駆使して、新たな状態への「適応」を創造的に支援するのがリハビリテーション医学の役割と考えています(⇒Message 1)。

ワクワクしながら、夢を叶えよう

リハビリテーション医学には以下の3つの特徴があります。 1)枠がない:そこに人が居て生活があればリハビリテーションがあり、始めから枠を設ける必要はありません。そのため、誰でも自ら新たな領域を拓いていくことが可能です。 2)チームの力:患者を中心に多くの職種が力を合わせ、機能・生活の質の向上、社会参加の促進を目指すことは、とても楽しく、また、やり甲斐があります。 3)サイエンスとして興味が尽きない:機能の再建とQOLの向上
をキーワードに、各々の興味に応じ、臓器・細胞、個体、社会の各レベルで研究を深めていける面白さがあります。 卒後37年が経ちますが、ますますリハビリテーション医学の面白さ、奥深さ、やり甲斐を実感する毎日です。是非、仲間に加わっていただき、それぞれの夢を叶えながら、一緒にこの魅力的でエキサイティングな分野を発展させていきましょう。教室を挙げて皆さんを精一杯応援します(⇒Message 2)。

Message 1 君は優れたデザイナー

リハビリテーション医はデザイナーだ

患者さんや家族と一緒に人生の設計図を描いていく

そして様々な困難な課題を前に、想像力と創造力、そしてチャレンジ精神を持ち

新たな可能性を拓いていく

それが君の仕事、君の目指すべきものだ

Message 2 あなたが夢を忘れても 夢はあなたを忘れない

君の夢は何かな
小さい頃の夢
覚えているかな

幼い頃、若い頃に
抱いた夢は
忘れたようで
心の奥にひっそりと
息づいている

そして
思いもかけない時に
再び君の心に
灯を点す

その瞬間を
大切にしよう
そうすれば
君の夢は
いつの日か
叶うかもしれない