リハビリテーション医学は、生活や動作の側面から、運動や認知、嚥下をはじめとする機能障害の診断・評価・治療を専門とする学問分野です。
当教室では、神経生理学や運動生理学、脳科学を治療に応用する ニューロリハ、がん患者のADLやQOLを調え高めるがんリハ、再生医学や分子生物学にまつわる再生リハ、これまで見過ごされていた障害の側面を詳らかにする新しい評価法の開発、最先端の技術とリハの融合を目指すリハビリ工学・ロボットリハ、地域医療や災害支援に関する地域リハや災害リハ、各種疾患・障害に対する専門的リハ、リハビリ心理学など幅広いテーマに取り組んでいます。
研究の実績は国内発表にとどまらず、国際的な交流も盛んです。慶應義塾大学理工学部や国内の研究機関とも共同研究を行っています。
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<受賞>
第45回日本脳卒中学会学術集会にて学会賞優秀口演賞 臨床研究部門受賞
令和2年8月24、25日にWeb開催されたStroke 2020において、田代祥一非常勤講師が学会賞優秀口演賞 臨床研究部門を受賞した。脳神経外科、神経内科、脳卒中科、リハ科等が参加する学際的な同学会において臨床1題、基礎1題に与えられる賞で、誰もが経験の乏しい事前録画方式の発表のなか全2383演題の頂点に輝いた。受賞演題は「慢性期脳卒中患者におけるClosed-loop神経筋電気刺激を利用したニューロリハによる体性感覚皮質可塑性の誘導」である。本研究では、運動機能回復を目的としたニューロリハが感覚皮質可塑性を伴って深部覚回復を促すことを電気生理学的に初めて明らかにした。慢性期脳卒中では運動機能回復は得られづらく、感覚機能に着目した治療応用も視野に入る業績となる。ただ最も特筆すべきは介入・評価ともに多くの施設で実施可能な手法を用いている点にこそあると言える。閉ループ系の末梢電気刺激を応用した先進的ニューロリハを用いてはいるが、市販機材もあり比較的普及している。評価に用いた体性感覚誘発電位も、中規模以上の病院であれば十分実施可能だ。近年ニューロリハは介入評価共に複雑化・大掛かり化が顕著であり、脳磁図や機能的MRI、反復磁気刺激等の設備が必須であるかのような先入観が蔓延し、一般医療機関での研究意欲を縮退させている。「普通の手法」による卓越した報告は、広く研究意欲を刺激し、脳卒中研究の裾野を拡大させる点で高く評価されたと言えよう。
令和2年8月24、25日にWeb開催されたStroke 2020において、田代祥一非常勤講師が学会賞優秀口演賞 臨床研究部門を受賞した。脳神経外科、神経内科、脳卒中科、リハ科等が参加する学際的な同学会において臨床1題、基礎1題に与えられる賞で、誰もが経験の乏しい事前録画方式の発表のなか全2383演題の頂点に輝いた。受賞演題は「慢性期脳卒中患者におけるClosed-loop神経筋電気刺激を利用したニューロリハによる体性感覚皮質可塑性の誘導」である。本研究では、運動機能回復を目的としたニューロリハが感覚皮質可塑性を伴って深部覚回復を促すことを電気生理学的に初めて明らかにした。慢性期脳卒中では運動機能回復は得られづらく、感覚機能に着目した治療応用も視野に入る業績となる。ただ最も特筆すべきは介入・評価ともに多くの施設で実施可能な手法を用いている点にこそあると言える。閉ループ系の末梢電気刺激を応用した先進的ニューロリハを用いてはいるが、市販機材もあり比較的普及している。評価に用いた体性感覚誘発電位も、中規模以上の病院であれば十分実施可能だ。近年ニューロリハは介入評価共に複雑化・大掛かり化が顕著であり、脳磁図や機能的MRI、反復磁気刺激等の設備が必須であるかのような先入観が蔓延し、一般医療機関での研究意欲を縮退させている。「普通の手法」による卓越した報告は、広く研究意欲を刺激し、脳卒中研究の裾野を拡大させる点で高く評価されたと言えよう。
平成26年3月末にベルリンで開催された第30回国際臨床神経生理学会(30th International Congress on Clinical Neurophysiology of the IFCN: ICCN2014)において、リハビリテーション医学教室の山口智史特任助教(特)がYoung Investigator Awardsの最高賞であるCobb Awardを受賞した。国際臨床神経生理学会は、ヒトにおける脳や脊髄、末梢神経、筋に至る広い範囲の機能とその病態を、生理学的に研究し、臨床医学から基礎医学までの国際的な専門家によって議論することで、健康と疾患の理解を促進することを目的とした学会である。同君は藤原俊之専任講師(現東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学准教授)の指導のもとに、電気生理学的手法に基づく中枢神経障害による運動障害の評価と新しいリハビリテーション治療戦略の研究を遂行している。今回、陽極経頭蓋直流電気刺激とパターン電気刺激の組み合わせによる、脊髄損傷後の下肢運動障害へのリハビリテーション効果を報告し、1,000題を超える発表のなかで35歳以下の若手に贈られる Young Investigator Awardsの最高賞であるCobb Awardを見事受賞した。受賞演題は、「The combined effects of anodal tDCS and patterned electrical stimulation on spinal inhibitory interneurons and motor function among patients with incomplete spinal cord injury (陽極経頭蓋直流電気刺激とパターン電気刺激が不全脊髄損傷患者における脊髄抑制性介在ニューロンと運動機能に与える効果)」である。陽極経頭蓋直流電気刺激は、頭蓋上から微弱な電流を流すことで脳活動を高めることが知られている。また歩行時に周期的に求心性神経線維に生じる高周波神経活動電位、いわゆる神経発火を模したパターン電気刺激は下肢の相反性抑制を即時的に改善させることが報告されている。同君は、この2つの手法の組み合わせにより、発症後6か月以上の慢性期の不全脊髄損傷患者において、障害された相反性抑制ならびに足関節運動機能を改善する可能性を示した。相反性抑制の障害は、痙縮ならびに動作における同時収縮などの異常な筋活動との関連が報告されており、運動の妨げになる可能性が指摘されてきた。本研究は、この運動障害に対する電気生理学的な根拠に基づいたリハビリテーション手法の効果を明らかにし、中枢神経障害後の下肢運動機能や歩行のリハビリテーションにつながる重要な研究成果と考えられる。本研究は、臨床応用を目指しており、現在、脊髄損傷患者の下肢運動機能と歩行機能に対する長期的な治療効果についての研究を計画している。
平成26年 2月27、28日に横浜市で開催された第29回日本静脈経腸栄養学会学術集会において、当教室の川上途行助教が“JSPEN クリニコ YOUNG DOCTORS AWARD ”を受賞した。受賞式は平成26年 2月26日の日本静脈経腸栄養学会学術集会総会(神奈川、パシフィコ横浜)において行われた。 2月27日に受賞講演「脳卒中片麻痺者の回復期リハビリテーション期における適切な栄養量」が行われ、脳卒中回復期のリハビリテーションにおける栄養分野の新たな知見を広く会員に印象づけた。
平成25年11月14、15日に福岡市で開催された第48回日本脊髄障害医学会において、リハビリテーション医学教室の田代祥一助教(85回)が学術奨励賞 基礎部門を受賞した。本学会は、脊髄障害の病態や治療などに関する研究発表、会員相互及び関連学会の連携協力を推進することを目的に昭和41年に設立された学会で、リハビリテーション科のほかに、整形外科、脳神経外科、神経内科、泌尿器科の医師が参加している。 同君は当教室の大学院生として、生理学・岡野栄之教授(62回)、整形外科学・戸山芳昭教授(54回)ならびに中村雅也准教授(66回)の懇切なご指導のもとに、脊髄損傷の治療に関する研究を行っている。今回、脊髄損傷後のリハビリテーション効果の分子機序の一端を報告し、全273演題中、基礎1題、臨床1題のみに与えられる同学会奨励賞を見事受賞した。受賞演題は、「 脊髄損傷後の運動負荷は, BDNF誘導による長期的なKCC2増加を介して,痙縮と疼痛を抑制する 」である。中等度脊髄圧挫損傷後の運動療法が下肢の痙縮や疼痛を抑制する現象は知られていたが、その分子的背景は明らかではなかった。同君は中等度胸髄圧挫損傷ラット歩行訓練モデルを作製し、痙縮と疼痛の詳細な評価や、組織・タンパク解析を行った。そして運動療法によって発現が上昇する脳由来神経栄養因子 BDNF が、損傷脊髄で発現が減少する KCC2 タンパクを回復させることで、痙縮や疼痛が抑制されることを明らかにした。運動療法による機能回復の分子レベルからの裏付けは、障害に悩んでおられる患者さんを勇気づけるものとしても意義深く、異なる二つの機能障害が少なくとも一部の分子機序を共有していることは今後の創薬などへ繋がりうる重要な研究成果と考えられる。研究グループでは、脊髄損傷へのiPS細胞由来神経幹細胞移植の治療応用を目指しており、同君も本受賞課題の発展に加え、移植後の運動・感覚機能に運動療法が与える影響についても引き続き研究を進めてゆく予定である。
平成25年度、包括脳ネットワーク夏のワークショップにおいて、リハビリテーション医学教室大学院2年の當山峰道君が「若手優秀発表賞」を受賞した。同君は、大学院生として愛知県岡崎市にある自然科学研究機構・生理学研究所の発達生理学研究系・認知行動発達機構部門において、伊佐正教授はじめとする研究員の方々の懇切丁寧なるご指導を仰ぎ、サルを用いた皮質脊髄路損傷回復機序に関する研究を行っている。受賞演題は、”Verified contribution of propriospinal neurons to recovery of hand dexterity after a corticospinal tract lesion in the monkey”で、演者はTakamichi Tohyama, Masaharu Kinoshita, Ryosuke Matsui, Shigeki Kato, Kaoru Isa, Dai Watanabe, Kazuto Kobayashi, Meigen Liu and Tadashi Isaである。この発表内容の抄を以下に示す。「皮質脊髄路損傷後サルの手指巧緻性回復に関わる神経経路を明らかにするため、C5損傷サル2頭に対し、ウイルスベクター2重感染により脊髄固有ニューロン(PNs)に選択的に遺伝子導入を行い、破傷風毒素を発現させることでその神経経路を遮断した。1頭で精密把持回復の障害を、もう1頭で回復後の手指巧緻性が再度障害されることを確認した。これらよりPNsが皮質脊髄路損傷後の手指巧緻性回復に寄与することが示唆された。」これまで、脊髄損傷などによる皮質脊髄路損傷後に手指巧緻性がどのような機序で回復してくるのかは十分に明らかにされてこなかったが、今回同君は脊髄固有ニューロンが巧緻性回復に重要な役割を果たしていることを明らかにした。今後も同テーマの進展を目指し、同研究室において研究を続けてゆく予定である。
慶應義塾大学グローバル COEプログラム「幹細胞医学のための教育研究拠点」において、平成24年度優秀RA賞( RA reward2012 )を、当教室の田代祥一助教が受賞した。これにより、平成24年12月3日の GCOE Final Symposium において、同プログラム拠点リーダーである、慶應義塾大学生理学 II 教室岡野栄之教授より、賞状と研究資金が授与された ( 写真 ) 。GCOEプログラム「幹細胞医学のための教育研究拠点」は、文部科学省の主導するプログラムで、幹細胞医学研究分野における人材育成と研究進展を目的に、慶應義塾大学にて主催されている。本賞は、本GCOEプログラムへ顕著な貢献があった、優秀な若手研究者若干名に対して贈られる賞であり、 臨床系教室からは唯一の受賞となった。田代助教の本プログラム関連の表彰は、昨2011年度優秀レポート賞に続き2年連続である。 田代助教は、現在、大学院医学研究科博士課程に在籍し、生理学II教室の脊髄再生プロジェクトチームにおいて、ラット脊髄損傷モデルのリハビリテーション効果の分子生物学的解析に関する研究を行っている。
平成24年日本臨床神経生理学会奨励賞を当教室の藤原俊之講師が受賞した。本賞は45歳以下の臨床神経生理学分野で顕著な業績があり、将来のさらなる発展が期待される会員に贈られる賞であり、藤原講師のこれまでの臨床神経生理学的手法、特に電気生理学的手法に基づく中枢神経障害による運動障害の評価と新しいリハビリテーション治療戦略の開発に対する数多くの業績が評価されての受賞となった。日本臨床神経生理学会は脳から脊髄、末梢神経、筋に至る広い範囲の機能とその病態を、生理学的に研究し、ヒトの神経系を中心とする複雑なシステムの研究を推進する学会であり、その構成も神経内科、精神科、リハビリテーション科、脳神経外科、整形外科、小児科などの臨床医学の分野のみならず、基礎医学、理工学分野等の多岐にわたる会員 よりなる。リハビリテーション医学の分野からは藤原講師が初めての受賞となった。 受賞式は平成24年11月8日の日本臨床神経神経生理学会総会(東京、京王プラザホテル)において行われ、11月10日に受賞記念講演「臨床神経生理学の応用による脳卒中機能回復に対する新しいリハビリテーション治療戦略」が行われ、科学的なリハビリテーション医学を広く会員に印象づけた。
<最近の論文>
脳卒中患者における感覚評価は意外と信頼性、妥当性が証明された手法が少なく、今回は、表在覚の評価としてSWMT, 深部覚の評価として母指探し試験の信頼性と妥当性を報告しました。これらの評価をスクリーニングとして使用することの裏付けです。
足関節の背屈イメージ、底屈イメージが相反性抑制に与える影響を検証した論文です。非練習下においては底屈イメージが相反性抑制を修飾したのに対し、背屈イメージは有意な変化を認めませんでした。が、背屈の運動イメージを練習した後では相反性抑制を修飾しました。足関節において背屈運動イメージは難易度が高い可能性と、練習によってそれが強化できる可能性が示唆されています。
食道癌のサルコペニアを研究されていた一般消化器外科の先生とのコラボで、周術期のリハ評価や訓練など嚥下関係の部分をこちらで執筆したものです。
【要旨】ハンセン病患者の足底知覚と歩行時足底圧分布の関係をうまく示した研究はありませんでしたが、臨床グレードごとに分けた場合に、中等度症例(グレードII:足部の変形は無いが、足底潰瘍があるかそれに繋がりうる創や胼胝形成を繰り返している症例)では知覚が保たれている部位に荷重する傾向があることを文献まとめとともに報告しました。障害像を基本的ですが重症度で分けるという姿勢を初めて導入した点と、ハンセン病研究を整理した学術的価値が認められました。
【要旨】FDA-2(構音障害の評価ツール)日本語版を作成し、信頼性・妥当性を検討し、それを用いてデュシェンヌ型筋ジストロフィーにおける構音障害を評価したという内容でございます。
【要旨】婦人科がん術後の排尿障害のパターンと出現頻度のアンケート調査
【要旨】湾岸リハのデータベースを利用した研究です。半側空間無視がリハビリテーションアウトカムに影響することはよく知られていますが、左半球損傷による右半側空間無視については、見過ごされていることが多いのが現状です。この論文では、右無視は左無視よりやや少ないですが、左半球損傷の30%程度で発生し、左無視と同じくADLのアウトカムを増悪させることを示しました。