田代祥一非常勤講師らのグループ、再生リハビリテーションによるiPS細胞由来神経幹細胞の治療効果増強を報告
投稿日：2023年2月7日
整形外科学教室、生理学教室との共同研究で、田代祥一非常勤講師の指導する整形外科大学院・柴田峻宏先生らは、慢性期脊髄損傷モデル動物において、ヒトiPS細胞由来神経幹/前駆細胞の治療効果が、強度漸増型トレッドミル歩行訓練の併用により有意に増強されることを報告した。
慢性期脊髄損傷では、いかなる神経幹/前駆細胞を移植してもそれ単独では機能回復が得られない。これまでに田代非常勤講師らがトレッドミル歩行訓練を併用すれば、治療を全く行わない群に比較して優位な運動・感覚機能回復が得られることを報告していた。今回の柴田先生らの報告では、臨床グレードのiPS細胞由来神経幹/前駆細胞移植をコントロール群として用い、訓練併用による有意な運動機能、組織学・生化学的変化を明らかにしたもので、以前の報告より一歩進めた研究成果となる。後者としては、グラフト細胞の生存率向上や成熟ニューロンへの分化、腰髄における神経活動性の亢進や縫線核脊髄路神経線維の増加が観察されたほか、BDNFやNT-3といった神経栄養因子の発現増加も認められた。特に運動療法により発現が増加する神経栄養因子の関与について言及した点は、再生リハビリテーションの機序解明の上でも重要である。
次の標的は、慢性期患者さんへの移植の適応の鍵となる「訓練単独群と比較しての有意な運動機能回復」であり、同グループの研究の進展を待ちたい。
Rehabilitative Training Enhances Therapeutic Effect of Human-iPSC-Derived Neural Stem/Progenitor Cells Transplantation in Chronic Spinal Cord Injury.
Shibata T, Tashiro S, Shibata S, Shinozaki M, Shindo T, Hashimoto S, Kawai M, Kitagawa T, Ago K, Matsumoto M, Nakamura M, Okano H, Nagoshi N.
Stem Cells Transl Med. 2023 Jan 17:szac089. doi: 10.1093/stcltm/szac089.