患者さんへ

先進的リハビリテーションについて

重度上肢麻痺に対する先進的ニューロリハビリテーションの取り組み

手の麻痺という後遺症

脳卒中、頭部外傷、脳腫瘍の手術後など、これらの状態において半数以上の方に上肢(手)の運動麻痺が後遺症として残ると報告されています。上肢の運動麻痺は治療が難しいことが知られており、以前は病気を発症してから半年以降の回復が困難であると言われていました。しかし、最近では脳科学研究の進歩により、脳には変化しうる特性(可塑性)があることが証明されてきています。また、治療機器の開発も進んでおり、発症から時間が経過した場合でも運動麻痺が改善する可能性があることがわかってきています。

手の麻痺に対する当教室の取り組み

私たちは、発症後に経過した上肢麻痺の治療に取り組んでまいりました。特に、「重い」麻痺で手を日常生活でほとんど使用できない状態の治療を、この15年間にわたり継続しています。現在、主に2-3週間ほどの入院期間中に「先進的ニューロリハビリテーション治療」を手の麻痺に対して行っております。当教室の手のリハビリの特徴は以下のとおりです。

1.手のリハビリに特化したチーム体制

運動麻痺を診断・治療する専門のリハビリテーション科医師、手のリハビリに熟練した作業療法士、病棟での生活を支え、生活の中での手のリハビリをサポートする看護師といったチーム体制により、患者さんの運動麻痺の改善を促進します。

2.先進的リハビリテーション機器の活用

主に、筋肉や神経に電気刺激装置(HANDS療法・IVES療法)を使用し、麻痺した筋肉の回復を促進します。

3.日常生活での麻痺手の使用をサポート

麻痺した手が改善しない理由の一つに「使えないから使わない」という状態が知られています。医師、作業療法士、看護師がそれぞれの立場から、現在の手の状態に合わせた日常生活での麻痺手の使用方法を提案し、「少しずつでも使う」状態まで導きます。運動麻痺の改善に非常に重要なのは、「使わないからよくならない」という悪循環を断ち切ることです。また、麻痺のない手にグローブなどを用いて拘束を行い、麻痺手の使用頻度を増加させる修正CI療法も実施しています。

○入院治療の注意点
  • リハビリテーションは平日のみ実施し、土日祝日は休みです。自主トレーニングの課題をお渡ししますので、居室で実施していただきます。
  • 作業療法は平日毎日行いますが、理学療法は週2-3回程度となります。言語聴覚療法は実施しておりません。ただし、初回の入院患者さんには、言語聴覚士による高次脳機能検査を実施させていただいております。
  • 入院の最終目標は、退院後も麻痺手が良くなり続ける状態に導くことです。そのためには、入院中に麻痺手をどう使うかを学び、日常生活の様々な場面で実践していただくことが最も重要です。